織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の性格を表す俳句として登場するホトトギスという鳥。
漢検1級の大問5の「熟字訓・当て字」にて出題される可能性のあるホトトギスは10種類ほどですが、漢検1級でも出題されないような漢字を使ったホトトギスを含めれば、なんと15種類以上にまで上ります。
どの表し方もホトトギスの特徴や伝説が元となっていますが、起源を辿れば5種類に分類できます。
それらの特徴や伝説についてを解説したうえで、15種類以上のホトトギスの漢字表記の由来について一覧にまとめました!
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ホトトギスってどんな鳥?
ホトトギスというのは、以下のような鳥です。
漢字表記につながる特徴や逸話として、以下の5つがあります。
1つ1つの項目についてと、それが由来のホトトギスの漢字について見てみましょう。
カッコウと似ている
カッコウもホトトギスもカッコウ目カッコウ科に属する鳥で、日本に渡来する時期や托卵(他の鳥に自分の卵を育ててもらうこと)の習性まで同じです。
鳴き声や托卵相手、大きさや体色に違いはあるものの、よっぽど見慣れている人でないとその違いには気づきづらいのでしょう。
ホトトギスがカッコウと似ていることに由来するホトトギスの漢字は、以下の2つです。
郭公、霍公鳥
口の中が真っ赤である
ホトトギスの口の中は真っ赤という特徴があります。
明治時代の歌人である正岡子規は、結核を患っており、自身が血を吐いて口の中が真っ赤になったことで、ペンネームを「子規」にしました。
ホトトギスはもともと漢字で「子規」と書くことができ、この由来は中国からのもの。
正岡子規の本名は「常規」であり、一文字重ねて自分の病の様子をホトトギスに例えてしまう表現力には驚きです。
口の中が赤いことに関連するホトトギスの漢字表記は、以下の1つです。
子規
田植えの時期に鳴き始める
ホトトギスが日本に渡来するのは4~6月頃で、ちょうど田植えの時期と重なります。
ホトトギスの鳴き声で田植えの時期を知ることができたため、「時を知らせる鳥」ということで「時鳥」と表されるようになりました。
ホトトギスがカッコウと似ていることに由来するホトトギスの漢字は、以下の3つです。
時鳥、田鵑、卯月鳥
靴職人の逸話もある
源俊頼が著した『俊頼髄脳』の中に、ホトトギスに関するこんなお話がありました。
現在モズ(百舌、鴃)と呼ばれている鳥が、当時はホトトギスと呼ばれており、モズは靴(沓)職人であった。ある鳥が靴を注文したところ、モズが「4月頃に届けます」と言い、代金をもらって去っていった。
約束の時期になっても靴が届かなかった鳥は、毎年4月頃になると「ホトトギスはどこだい?」と探し回るようになった。
あくまで逸話なのですが、このことに由来するホトトギスの漢字表記が3種類ほどあります。
沓手鳥、沓乞、鶗鴂
蜀の君主の生まれ変わり
古代中国の蜀の杜宇という君主がおり、農業を推進して蜀の治世に成功しました。
彼は望帝杜宇と名乗り、その後も蜀の発展に貢献した後、側近に位を譲ります。
杜宇の死後、その霊魂が眠る山でホトトギスが鳴く姿を蜀の人が見て、「帝が蜀に帰りたがっている」や「帝が農業に励むよう指示している」などと伝えられるようになりました。
この伝説にまつわるホトトギスの漢字は多く、7種類ほどあります。
不如帰、蜀魂、蜀魄、杜宇、杜鵑、帝魂、催帰
ホトトギスの漢字一覧
漢検の辞典に載っているホトトギスと、そうでないマイナーなホトトギス、さらに鳥ではないホトトギスの漢字までリストアップしてみました。
漢検の漢字辞典に登場するホトトギス
まずは、漢検協会が公式に出している『漢検漢字辞典[第二版]』に載っているホトトギスを10種類紹介します。
由来については、主に5種類に分けられます。(ホトトギスってどんな鳥?を参照)
漢字 | 由来・備考 |
郭公 | 「かっこう」とも読む。カッコウとホトトギスが似ていることから。 |
霍公鳥 | 郭公と音は同じ。「霍」は慌ただしく鳥が飛ぶ羽音を意味する漢字。 |
子規 | ホトトギスを意味する漢語より。 |
時鳥 | 田植えの時期を知らせてくれる鳥であることから。 |
沓手鳥 | 沓の作り手だった鴃が、昔はホトトギスと呼ばれたことから。 |
不如帰 | 望帝杜宇の蜀へ帰りたい(帰るに如かず)という思いから。 |
蜀魂 | 望帝杜宇の蜀へ帰りたいという魂が、ホトトギスに宿ったことから。 2014年度第2回の1級本試験にて出題された熟字訓。 |
蜀魄 | 望帝杜宇の蜀へ帰りたいという魄が、ホトトギスに宿ったことから。 |
杜宇 | 古代中国の蜀の第4代君主・望帝杜宇の魂がホトトギスに宿ったことから。 2016年度第1回の1級本試験にて出題された熟字訓。 |
杜鵑 | 杜宇の「杜」に、「鵑」を合わせた熟字訓。 |
これらの漢字は、当ブログ開発のアプリ「漢検1級徹底攻略~熟字訓・当て字~」にも収録されています。
漢検の漢字辞典では登場しないホトトギス
こちらは、より情報量の多い漢字辞典である『新潮日本語漢字辞典』等に登場しているホトトギスです。
漢字 | 由来・備考 |
田鵑 | 田植えの時期に鳴き始める「鵑」の意味。 |
卯月鳥 | 卯月(4月)頃に鳴き始めることから。 |
沓乞 | 沓の作り手だった鴃を、もう一度会いたいと乞う鳥の話から。 |
鶗鴂 | 「テイケツ」とも読む。「鴂」は鴃のこと。 |
帝魂 | 古代中国の蜀の第4代君主・望帝杜宇の魂がホトトギスに宿ったことから。 |
催帰 | 望帝杜宇が死後、蜀へ帰りたいという気持ちを催したことから。 |
鳥ではないホトトギスもある
実は、同じ「ほととぎす」という読みでも、鳥ではなく植物のホトトギスも存在します。
ユリ科の多年草であるホトトギスには、以下の3つの表記があります。
漢字 | 由来・備考 |
郭公花 | 花の斑点が、郭公の胸の模様と似ていることから。 |
杜鵑草 | 花の斑点が、杜鵑の胸の模様と似ていることから。 |
油点草 | 花の斑点が、油染みのように見えるから。 |
由来のほとんどはホトトギス(鳥)と関連がありました。
まとめ
この記事では、『漢検漢字辞典[第二版]』や『新潮日本語漢字辞典』に掲載されているホトトギスについて解説しました。
適当な漢字の組み合わせで作られたものではなく、それぞれのルーツを辿ればホトトギスの見た目や習性、逸話へと繋がっています。
今回紹介した以外の漢字表記もまだまだ存在するようですが、まずは漢検の辞書に載っているホトトギスから覚えておきましょう。
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- 日本漢字能力検定協会(2015)『漢検 漢字辞典[第2版]』
- 新村出編(2018)『広辞苑 第七版』,岩波書店
- 新潮社編(2007)『新潮日本語漢字辞典』,新潮社
- 藤堂明保他(2019)『漢字源 改訂第六版』, 学研プラス
- 都留文科大学文学部国文学科<https://sites.google.com/tsuru.ac.jp/kokubunsite530/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E4%B8%AD%E4%B8%96%E6%96%87%E5%AD%A6%E3%82%BC%E3%83%9F/%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%81%A8%E3%81%8E%E3%81%99%E3%81%AE%E7%94%B1%E6%9D%A5>,2023年5月26日アクセス
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