漢字の読みを無視して、漢字の意味をつなげてできた熟字訓。
漢字の意味を無視して、漢字の読みをつなげてできた当て字。
どちらも知らないと読めないものが多く、受験に向けた中高生や漢検学習者を困らせています。
特に、漢検1級では大問5で熟字訓・当て字だけで10題出題されるため、ある程度の知識量は備えておきたいところ。
この記事では、「鶏」を含む熟字訓・当て字を15個、解説付きで紹介します。
似たような生物を表していたり、植物名として使われていたりと、非常に紛らわしい「鶏」シリーズを一気に覚えてしまいましょう!
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「鶏」を含む熟字訓・当て字一覧表
日本漢字能力検定協会が出している『漢検 漢字辞典 [第二版]』の巻末資料「熟字訓・当て字索引」によれば、「鶏」という漢字を含む熟字訓・当て字は15種もあります。
まずは一覧表をお示しします。
※太字になっている熟字訓・当て字は、過去の漢検1級本試験にて出題されたものです。
漢字※ | 読み | 解説(広辞苑や漢検漢字辞典より) |
軍鶏 | しゃも | ニワトリの一種。闘鶏用。食用にもなる。シャムから渡来したことから。 |
矮鶏 | チャボ | ニワトリの一品種。あしがきわめて短い。原種が、インドシナ半島にあった国、チャンパから渡来したことからという。 |
鶤鶏 | とうまる | ニワトリの一品種。体は大きく羽毛は黒い。いい声で長く鳴く。新潟県で改良された。「唐丸」とも書く。 |
黄鶏 | かしわ | 羽毛が茶色のニワトリ。ニワトリの肉。 |
鶏冠 | けいとう、 とさか | 【けいとう】ニワトリのとさかに似た植物。 【とさか】ニワトリやキジなどの頭の上にある肉質の冠のような突起。 |
花鶏 | あとり | 鳥綱スズメ目アトリ科アトリ属に分類される鳥類の一種。 |
秧鶏 | くいな | クイナ科の鳥の総称。水辺にすみ、ニワトリのように夜明けを知らせることから。 |
水鶏 | くいな | クイナ科の鳥の総称。水辺にすみ、ニワトリのように夜明けを知らせることから。 |
吐綬鶏 | しちめんちょう | シチメンチョウ科の鳥。漢名はのどの肉だれが綬(飾りひも)を吐いているように見えることから。和名は皮膚の裸出した部分が赤、青、黄色などに変わることから。七面鳥。 |
食火鶏 | ひくいどり | ヒクイドリ科の鳥。オーストラリアにすむ。ダチョウに似る。のどに赤い肉垂れがある。「火食鳥」とも書く。 |
珠鶏 | ほろほろちょう | ホロホロチョウ科の鳥。アフリカ原産。食用。 |
鶏冠木 | かえで | カエデ科の落葉高木の総称。葉がニワトリのとさかに似ていることから。 |
鶏眼草 | やはずそう | マメ科の一年草。道端に自生。葉が楕円形で、先をつまんで引くと矢筈(やはず)形に切れることから。「矢筈草」とも書く。 |
鶏児腸 | よめな | キク科の多年草。山野や道端に自生。初秋に薄紫色の花をつける。若葉は食用。「嫁菜」とも書く。 |
鶏魚 | いさき | スズキ目イサキ科に属する海水魚の一種。食用や釣りの対象として人気が高い。 |
大きく分けて以下の4種類に分けられます。
やはり鳥系、特にニワトリ関連の言葉が多いですね。
以上の種類ごとに、漢字の由来等を細かく解説します。
ニワトリに関する熟字訓
シャモ(軍鶏)
鶏の品種の一つで背が高いのが特徴で、闘鶏用であることから「軍」が使われています。
元は「暹羅鶏」と呼ばれ、タイ(旧国名:暹羅)から日本に伝わったことが由来です。
「暹羅」も熟字訓・当て字の対象なので、合わせて知っておきましょう。
チャボ(矮鶏)
鶏の品種の一つで、小さい体や短い脚、直立したしっぽの羽が特徴です。
「矮」には「背丈が低い、丈が短い」という意味があるため、それが漢字の由来となっています。
名前自体は、17世紀まで存在していた東南アジアの国のチャンパー(占城)から伝わったことに由来します。
トウマル(鶤鶏)
鶏の品種の一つで、黒い羽毛が特徴です。
「唐丸」や「蜀鶏」とも書き、中国の蜀で作り出された品種が日本に来たことが名前の由来となっています。
日本では、その品種と軍鶏を新潟県でかけ合わせてできた品種を鶤鶏と呼んでいます。
カシワ(黄鶏)
羽毛が茶色に鶏を指し、その肉が美味とされていました。
ただ、時代の変遷とともに鶏肉の総称となっています。
茶色い羽毛が漢字の組み合わせの由来かとは思いますが、個人的には丸亀製麺の「かしわ天」が黄色いことから、「黄鶏」=「かしわ」と覚えました。
ケイトウ、とさか(鶏冠)
「とさか」は鶏や雉の頭頂部にある肉質の冠状の突起を指します。
その鶏の頭についている「とさか」に形状が似たことに由来するのが「ケイトウ」というヒユ科の一年草で、「鶏頭」とも書きます。
ニワトリ以外の鳥に関する熟字訓
アトリ(花鶏)
スズメ目アトリ科の鳥で、羽は黄褐色をベースに白と黒の模様があります。
大群で行動し、一斉に木に止まった際に胸部の黄褐色が花のように見えることが漢字の由来と考えられます。
また、伝説上の獣を表す「獦」を使って、「獦子鳥」とも書けます。
クイナ(秧鶏、水鶏)
「くいな」は絶滅が危惧される夜行性の鳥です。
- 水鶏・・・水辺に生息し、鶏のように夜明けを知らせるから。
- 秧鶏・・・湿原や水田に生息し、鶏のように夜明けを知らせるから。
②の「秧」は、背の低い稲の苗を表す漢字です。
シチメンチョウ(吐綬鶏)
のどに肉垂れがあり、綬(ひも)を吐いているように見えることから、この漢字が使われています。
頭から首にかけて露出している皮膚が赤や青などに色が変わることから、シチメンチョウという名がつきました。
ヒクイドリ(食火鶏)
オーストラリアなどに住むダチョウに似た鳥で、翼はあるものの飛ぶことはできません。
喉にある赤い肉垂れが、火を食べているかのように見えたことが漢字の由来となっています。
別の表記としては、読みの順番通りに「火食鳥」と書くこともあります。
ホロホロチョウ(珠鶏)
キジ目の鳥で、黒い胴体にある白い斑点が特徴的です。
この珠のような模様が漢字の由来と思われます。
植物に関する熟字訓
カエデ(鶏冠木)
モミジと植物学的には同じ系統であり、葉の形が蛙の手に似ていることから、カエデと名付けられました。
漢字表記としては、「槭」、「楓」、「槭樹」、「蛙手」などがあり、後半2つは熟字訓・当て字に割り当てられています。
カエデの中には紅葉するものとしないものがありますが、紅葉したものについては鶏冠のように見えることから、「鶏冠木」が当てられています。
モミジとの違いはこちらの記事をご覧ください↓
ヤハズソウ(鶏眼草)
マメ科の一年草で、葉っぱを引くと矢筈形に切れることから、「矢筈草」とも書きます。
「鶏眼草」という表記は漢名から来ていますが、なぜ鶏の目なのかは定かではありません。
ヨメナ(鶏児腸)
キク科の多年草で、初秋に花を咲かせます。
美しく優しげな花を咲かせることから、「嫁菜」という表記が一般的です。
「鶏児腸」という表記は漢名から来ていますが、「鶏の子どもの腸?」との関連は定かではありません。
魚に関する熟字訓
イサキ(鶏魚)
スズキ目イサキ科の海水魚で、夏が旬の食用の魚です。
背中のヒレには棘状のスジがあり、それが鶏冠に見えたことから、「鶏魚」が当てられました。
単なる当て字としては、「伊佐木」や「伊佐幾」も使われます。
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- 日本漢字能力検定協会(2015)『漢検 漢字辞典[第2版]』
- 新村出編(2018)『広辞苑 第七版』,岩波書店
- 新潮社編(2007)『新潮日本語漢字辞典』,新潮社
- 藤堂明保他(2019)『漢字源 改訂第六版』, 学研プラス
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