モグラやリスを漢字で書くと?「鼠」を含む熟字訓を18個紹介!【熟字訓・当て字一覧②】

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鼠がつく熟字訓・当て字 アイキャッチ

 漢字の読みを無視して、漢字の意味をつなげてできた熟字訓
 漢字の意味を無視して、漢字の読みをつなげてできた当て字

 どちらも知らないと読めないものが多く、受験に向けた中高生や漢検学習者を困らせています。

 特に、漢検1級では大問5で熟字訓・当て字だけで10題出題されるため、ある程度の知識量は備えておきたいところ。

 この記事では、「鼠」を含む熟字訓・当て字を18個、解説付きで紹介します。

 似たような生物を表していたり、植物名として使われていたりと、出てくると厄介な「鼠」シリーズを一気に覚えてしまいましょう!

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めもの内容

「鼠」を含む熟字訓・当て字一覧表

 日本漢字能力検定協会が出している『』の巻末資料「熟字訓・当て字索引」によれば、「鼠」という漢字を含む熟字訓・当て字は18種もあります。

 まずは一覧表をお示しします。

太字になっている熟字訓・当て字は、過去の漢検1級本試験にて出題されたものです。

漢字読み解説(広辞苑や漢検漢字辞典より)
鼴鼠もぐらモグラ科の哺乳動物の総称。和名は、古名の「もぐらもち」からで、地にもぐって土をもち上げることから。
鼯鼠むささび、
ももんが
【むささび】リス科の哺乳動物。リスに似るがやや大きい。
【ももんが】リス科の哺乳動物。ムササビに似るがやや小形で目が大きい。
栗鼠りすリス科の哺乳動物。森林にすむ。尾が長くふさふさしている。クリを好むネズミという意味から。
山鼠やまねヤマネ科の哺乳動物。日本特産で本州以南の山林にすむ。褐色で背に一本の黒い縦線がある。ネズミに似る。夜行性で冬眠する。
冬眠鼠やまねヤマネ科の哺乳動物。日本特産で本州以南の山林にすむ。褐色で背に一本の黒い縦線がある。ネズミに似る。夜行性で冬眠する。
鼬鼠いたちイタチ科の哺乳動物の総称。敵におそわれると悪臭を放って逃げる。
袋鼠カンガルーカンガルー科の哺乳動物。
海鼠なまこナマコ類の棘皮動物の総称。
熬海鼠いりこ干しなまこのこと。
海鼠子このこナマコの卵巣を干した食品。
海鼠腸このわたナマコのはらわたを塩漬けにした食品。
乾海鼠ほしこナマコの腸を取り除き、ゆでて干した食品。いりこ。「干海鼠」とも書く。
金海鼠きんこキンコ科の棘皮動物。煮て干したものは中華食材になる。
老海鼠ほやホヤ類の原索動物の総称。赤茶色の厚い皮で覆われ、食用になるものもある。
鼠李くろうめもどきクロウメモドキ科の落葉低木。山地に自生する。
鼠麹草ははこぐさキク科の二年草。道端に自生。「母子草」とも書く。
鼠坊ねずっぽネズッポ科の海魚の総称。頭は平たく、体は細長くて鱗がない。
鼠姑わらじむし枯葉や石の下などにすむ甲殻類。ダンゴムシに似ているが、触れても体を丸めない。

 大きく分けて以下の4種類に分けられます。

 ネズミ自体が哺乳類ということもあり、哺乳類が最多。
 ただ、ナマコも負けていません。

 以上の種類ごとに、漢字の由来等を細かく解説します。

哺乳動物に関する熟字訓

モグラ(鼴鼠)

 モグラは一般的には「土竜」と書きます。

 「鼴」だけでもモグラの意味を持ちますが、ネズミと姿が似ていることから、「鼠」が使われています。

ユーラシアハタネズミ
(出典:Dieter TD, first upload in de wikipedia on 13:31, 28. Apr 2005 by Dieter TD, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)
ヨーロッパモグラ
(出典:Muséum de Toulouse, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 実際、手足こそ違うものの外見はほぼ同じですね。

ムササビ(鼯鼠)・モモンガ(鼯鼠)

 木から木へと滑空できる多才な鼠であることから、「つの技を持つ」で「鼯」が使われたとされています。

 「鼯」一文字でも、ムササビやモモンガという意味がありますが、「鼠」を重ねることでネズミと同じ種であることがより強調されていますね。

 ちなみに、モモンガのほうがムササビよりもサイズが小さいです。

リス(栗鼠)・ヤマネ(山鼠、冬眠鼠)

 モモンガやムササビと同様、リスやヤマネもネズミと同じ哺乳類齧歯目に属しています。

リス
(出典:BirdPhotos.com, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons)
ヤマネ
(出典:Yamaneseisokubunpuiki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 リスは「などの木の実を食べる」、ヤマネは「域に生息する」が由来と考えられます。

 また、ヤマネは冬眠することから、「冬眠鼠」とも表されます。

イタチ(鼬鼠)・カンガルー(袋鼠)

 この2種に関しては、ネズミと同じ哺乳動物ではあるものの、分類としては離れています

 「鼬」は一文字でも「いたち」と読み、ネズミを餌にしています。

 カンガルーに関しては、「袋」はわかりやすいのですが、なぜこのサイズで「鼠」なのか‥‥。

イタチ
(出典:National Park Service, Public domain, via Wikimedia Commons)
カンガルー
(出典:John Torcasio, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 カンガルーの特徴でもある歯がげっ歯類のそれと重なったのか、ネズミカンガルー科と混同されたのか、はっきりとしたことはわかりませんが、袋の鼠はカンガルーです。(ジャンプして逃げそう)

ナマコに関する熟字訓

 ナマコは海底をはい回る生物です。
 その姿から、「」と名付けられたと考えられています。

 元々は「コ」という生物であり、そこから以下のような言葉が派生しました。

  • ナマコ(海鼠)‥‥生のコ。
  • イリコ(熬海鼠)‥‥煎ったコ。「熬る」は「煎る」と同義。「海参」とも。
  • コノコ(海鼠子)‥‥コの子。ナマコの卵巣を干した食品。
  • コノワタ(海鼠腸)‥‥コのはらわた。ナマコの腸を塩辛にした食品。
  • ホシコ(乾海鼠・干海鼠)‥‥干したコ。イリコと同じものを指す。
  • キンコ(金海鼠)‥‥ナマコの仲間の種。宮城県華山沖で賞味されたことから。
キンコ
(出典:Creator Eric A. Lazo-Wasem Gall L (2018). Invertebrate Zoology Division, Yale Peabody Museum. Yale University Peabody Museum. Occurrence dataset https://doi.org/10.15468/0lkr3w accessed via GBIF.org on 2018-12-24. https://www.gbif.org/occurrence/1039226706, CC0, via Wikimedia Commons)

 ナマコと似ているという理由で、ホヤを「老海鼠」と書き表します。

 ただ、こちらに関しては、ナマコとホヤは分類が違うので全くの別物です。

ホヤ
(出典:Joi Ito, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

 ただ、海鼠のシリーズを覚えるついでに、老海鼠まで覚えてしまいましょう!

植物に関する熟字訓

 植物の名前にも「鼠」が使われています。

 ただ、登場する2つの植物に関連性はありません

クロウメモドキ(鼠李)

 別の表し方では「黒梅擬き」と書く落葉低木で、高さは1.5m~5mほど。

 生薬名としての「鼠李子そりし」が有名で、下剤として使われています。

クロウメモドキ科のクマヤナギ
(出典Sten Porse, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 なぜ「鼠」が含まれるのかを調べていると、漢名からの誤用であるという説が出てきました。

 ただ、どのような誤用によって、クロウメモドキが「鼠李」と表されるようになったのかは不明です。

ハハコグサ(鼠麹草)

 ハハコグサは道端で見かける、黄色い花を咲かせる小型の草です。

 春の七草一つである「ごきょう」のことであり、若い茎葉は食用でもあります。

ハハコグサ
(出典:Sphl, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 葉の軟毛がの耳に似ていて、花の形がのように見えることから、漢名では「鼠麹草そきくそう」と呼ばれ、現在熟字訓として使われています。

その他生物に関する熟字訓

 こちらも関連性はありませんが、「鼠」が付く生物について、最後に紹介します。

ネズッポ(鼠坊)

 温帯から熱帯に分布する硬骨魚で、ネズッポ科という分類名を指します。

ネズッポ科のニシキテグリ
(出典:I, Luc Viatour, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 漢字の由来はわかりませんが、「ネズ」=「鼠」、「ポ」=「坊」という読みから当てられたのではないかと考えられます。

ワラジムシ(鼠姑)

 ダンゴムシと似ているものの、触っても丸くならない甲殻類です。

ワラジムシの画像
ワラジムシ
(出典:Yug, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 昔の本にワラジムシを「鼠婦」と表したものがあり、そこから転じたのではないかと考えられます。

 ただ、「鼠婦」の時点で鼠は関係ないようで、その由来は定かではありません


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参考文献
  • 日本漢字能力検定協会(2015)『漢検 漢字辞典[第2版]』
  • 新村出編(2018)『広辞苑 第七版』,岩波書店
  • 新潮社編(2007)『新潮日本語漢字辞典』,新潮社
  • 藤堂明保他(2019)『漢字源 改訂第六版』, 学研プラス

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